全く・・・、また大きな仕事を引き受けてしまった。引き受けたというより、引き受けさせられたというのが正しいのだが、上手に逃れられなかった。何故だか、逃れ口上を言い出している自分がとても嫌なやつに思えてならなかったからね・・・。要するに損をするエエカッコしいなのであるのか。しかし、どう考えても、自分は苦手と経験不足なところがあるのがアリアリなのであるが、ダレもやらないのである。そして、私のグループの名称と、私の肩書きは、誠にもってどうとでも取れる名称なのであって、まさに「何でも屋」な状態。不器用でオッサンな私が、右往左往どころか、縦にも動くといった感じなのであります。
しかし、ものは考えようであります。これからは、仕事の世界でも生き残りをかける時代。なので皆、出世のエスカレーターからはみ出た人材は、それぞれの専門性に磨きをかけないといけないものと思い込んでいる。しかしだね・・・・専門性の高い人材だけを集めてみると、高ければ高いほど・・・その分野に縛られるわけであります。つまり、実際の現場では、いろいろある専門性を「束ねる」「まとめる」「調整する」などの役割が必要になるのとも思えるのです。大きなプロジェクトであれば尚更。それはリーダーの仕事なのかもしれない。だけどリーダーは一人なわけなので、能力と時間に限りがある。補う役目が必要である。
つまり、組織の目的を理解して、あるべき方向性に束ねる黒子役がいないと、舞台が進行しないのだと・・・・最近思えてならない。ジェネラリストというのとも違う。参謀というのも大げさだ。調整役というとちんけだ。どうもぴったりとした言葉が思いつかないが、そういう役目が必要であり、そういうものこそ、経験とか感どころが必要。つまり、シニアの知恵と感と行動力がカバーすべき領域なのかもしれない。ぴったりとフィットした役割だけをこなす時代は終ったのかも。専門性でとんがるか、つなぎ役として存在感を増すか、どちらかでないと之からのビジネスでは、生き残れないのかもしれない・・・。
・・・などと考えながら、とぼとぼ歩く西荻窪の路地裏。いや〜、杉並区ってほんといいところ。庶民的なところと、ちょっといい住宅が混在しているところが妙に憧れるのですが。駅から1分もしないうちに、こちら「いしはら」さんに到着です。がらりと扉を開けると、先客ゼロ。白色蛍光灯が店内を煌々と照らす店内は、年期を感じさせながらも清潔感に溢れます。徐に麺釜前の席に腰を落とし、定番の支那そばをオーダーいたします。このオーダーを通した先のご店主が、釜に麺を投入し・・・・泳ぎ加減とかを見たり、平ザルを扱う様など一連の作業を見るのが楽しい。何千回、何万回も繰り返してきた作業だからこそ、動きに完成度というべきか、ビシッとしたかっこよさも感じるのね・・・。あこがれ気分で眺めていたら、あというまに配膳完了。まさに職人の一杯!気が引き締まる思いでレンゲを投入し、静かに汁を啜り出す・・・。やはり、想像以上に、唸るね。
めさ!めっさ!!旨いがな!!!こういうの好き〜、いろいろ食って来た煮干し系だけど・・・やはり基本型は旨しでんがな・・・
【スープ:煮干しと豚コクの絶妙バランスにカエシの丸みあるエッジング!落ちつく大人の一杯】
<一周回って原点に戻る感覚!煮干の甘味とカエシのエッジングに泣く>
いやはや・・・、スープの一口目から「原点回帰」を思わせる煮干し豚コクの醤油ダレの揺らめきを感じます。まさにお師匠のお仕事と言える、引き締まった仕事を感じますよ、これは・・・・。極ニボなどエキストリーム系もとても麻薬的に惹きつけられるのですが、定番系の中でもビシッと決まった感がある。煮干しの出汁の出方がまた甘いコク主体の中に淡い苦みがあり、煮干独特の甘苦アイデンティティを表します。まさに「ありがち」な味わいなれど、どことなく全体からにじみ出るオーラ感は何ぞや!と思うと興奮がさめません。
懐古系な仕上がりなれど・・・少しばかりじっとりとした煮干し感がたまらんではないか・・・・。煮干に色気や華やかさを足すなら、中央線沿線ならば「春木屋」を思い出しますが、「地道」「質実」の絵具を足すなら・・・・こんな感じの「たんたん亭」的な感覚。かなり醤油ダレの存在を感じさせるカラーリングをしていますが、醤油系の醸造感より、塩気を感じる。塩辛いというかというと、さに非ず煮干の甘いコクがじっとりと味わいのエキスに結びついたような・・・。ボディが煮干しを洗わずならば、塩気は味わいをシェイプ。古典的とまではいかない、昭和レトロの一杯ともいかない、なんとなくカテゴリーや比喩がしずらいジャンルなスープが実にええ感じですやん! 流行りの味わいではないが、ラー好きなら、いろいろ食べ歩いた末に行きつくような安堵感を・・・・そんな旨みエキスであります。
<そこそこの豚コクが、程よいと思える微妙な濃ゆさが絶品>
煮干と醤油感だけではなく、キッパリとしている豚コクの味わい。堪能し終えて感じるじっとりとした感覚。キッパリとじっとりが、クリアーな印象で包み込まれる(もはや意味不明)味わいが素敵。その仕業は・・・表面の極うっすらしたラードな味わいなのでしょうな・・・。
確かにボディの豚煮だしもありましょうが、微妙な泡立ち感と、霞のような細かい脂の粒子が、いかにも豚コクを印象づけようと誘っております。味わいの全体感は、煮干しの味わいと香りに包まれるスープなのに・・・これは、意外というかむしろ皮肉と言うべきか。ラードは、天才であります。
醤油系スープの割に全体的に深みのある緑の色合いがあるように感じる。その色合いは、煮干し由来の他なにでもないはずなのに、下支え的に塩味とうっすらラード感を感じる。煮干しと豚鶏との合わせ方に、一日の長たるやを知りますな・・・。
【麺:スタンダードとも思えるクチリ!とした千切れ、滑らかなスベリ・・・】
<百戦錬磨を感じる大釜茹で上げ、平ザル湯切り>
先客ゼロの状態だったから、大きな茹で釜は、たった私ひとりのための麺をゆったりと釜におどらせるように茹で上げます。タイマーなんて無粋な計器は必要ござらんといったところあか・・・。いわゆる中華麺のドストライクですが、角麺がやや膨れ上がったような多加水系の麺が、実に質実と感じさせます。大量の熱湯で、麺にストレスをかけないようにとゆったりと踊らせるように、麺釜の中をあちこち入れ替わりながら、ゆであがるタイミングを待ちます。
一瞬チャチャチャっと平ザルを軽く軸反転を繰り返して・・・・予め寸前に用意されたスープ入り丼に投入し、麺箸で軽く整形してからカウンター供せられる一品。なので歯応えはプニプ二としていながらも、アルデンテ峠を少し超えたような印象がまた気が抜けるようで、気持ちよかったりする。
<スベスベとした滑りとしなり感がナイス!>
微妙な茹で加減で引き上げられる麺は、産声をあげたかのような非常にイキイキとした感覚があって嬉しい限り。表面のうっすらとした滑り層が、実にすべすべとして気持ちよいではありませぬか。いつものようにずぼぼぼぼっーーーーーワイルドに啜り上げようとしてみたものの、不思議とナチュラルに大人しくまっとまってしまう。見た目以上に、まとまり感がありまして、気持ちよいです。一方、麺のたおやかさは、腰の感覚が「しなる」というニュアンスを微妙に残していて・・・品質感を感じさせる。大衆の中の高級感っといった感覚でスルスルと食えます。
【具:具で懐古の風情を思わせる・・・・ナイスな歯応え!剛と柔のバランス感じる配置】
<中華の技法をしっかり感じる歯応えチャーシュー>
さて・・・このチャーシューだが、見た目以上に本格中華的な、ハードな仕上がりと、発酵したような旨味熟成を感じる肉質なのであります。ロース部分を細かく区切ったような形状。そこに、調味料がじっとりと染み込み、ぎゅっと詰まったような旨味成分を体感いたします。実際に前歯で千切ろうとすると・・・実にクッシリとした歯応えです。これを固いと切り捨ててはなりませぬな。旨味の凝縮の結果でありまして、固くても味気ない既製品とは全く別ものであります。一つ難を言えば・・・「サイズ感」。肉をもっとくれ〜(笑)。
<深さとあっさり感が交互する歯応えメンマ>
海苔とチャーシューで隠れている存在感。海苔をはがして麺と一緒に食って胃の中に落とし込んだあと、ゆっくりとメンマの味わいだす。柔らかいこりこり感。そして若さと漬け込みの深さを背反と思いながらも、同時に味わう。特にボリュームがないので、ありがたみがあるわけでもないのだが、質感があって旨しと思えます。スープの味わいと塩気の少し抜けた味わいが実になナチュラル。旨しでありました。
総じまして、「ここは静かに確かなものを食いたい気分には最適!」と申せましょう! 適度に酒と、日本酒に合う肴を供しながらも、〆かメインか・・・どちらかは分からんが、非常に貫禄感じる質実な支那そばを提供してくれます。一人酒好き、ラーメン好きな私には、まさにぴったりなお店かもしれません。知らなんだ〜、以前昼間に訪問したので、夜の部はこんなにまったりしていたとは!まさしく大発見!なので詠います。
和み入る
大人の支那そば
訪ねきて
静けさ楽し
会話も楽し
お粗末!ということで家族にも感謝しながら合掌!!今日も本当にごちそうさまでした!!!
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