【今週のラーメン２０１２】らぁ麺美志満（東京・桜台）冷製らぁ麺

　暑さもピークアウトしたかな・・・・と思ってはみても、まだまだ湿気も高い、東京も蒸し暑いのであります。そんな中、夏の後半になり冷やしに目覚めて活動を続けてまいりましたが、そろそろ収める潮時か・・・。従来「冷やし中華」が主流な夏の中華麺ですが、近年の「冷やしラーメン」の開花ぶりには目を見張るものがあるな〜と感じてしまいました。締めくくりとして、個人的にはこの一杯を推挙しておきましょう！この一杯は、冷やしの中で度肝を抜いてしまいました。是非ともまた来年も同じものを提供していただきたい次第。

【ここ好き！な麺好きが集う落ち着いたカウンター・・・静かに高校野球を眺めるそれは夏風景】

　この日は、少しピークアウトしたようなお昼過ぎに訪問。カウンターは５割くらいの埋まり具合で、穏やかなご店主の笑顔を左側面に感じながら、一番奥の席へと滑り込みます。他客みな静かにそれぞれの麺を啜り、時々歓声が溢れるテレビ画面に気まぐれ気分で目をやります。それは「夏の甲子園」。今年は東海大相模が優勝しましたね（おめでとうございます）。私が高校野球でも好きなのは、得点シーン。中でもセンターからバックホームへの返球は、シュート回転を効かせながら逆弓状に糸を引くように帰ってきて、ホーム付近でクロスプレーになるのがたまりません！突き刺す返球。判定が出るまでの刹那。アウトかセーフとか結果に興味なく、瞬間の喜怒哀楽さがまた切ない。年を重ねるとそんなシーンがいつも心から美しいと思えてなりません。この日もそんな感慨にふけっていたっけ。唐突いお待ち遠おさまでしたと、美しい冷やし中華が配膳されましたわ・・・。ここが今年の夏で、私が一番心が安らいだ瞬間だったかもしれません。

【冷ややかに緩やかなジェルスープ！程よい塩気と出汁加減・・・オリーブ系オイルとレモン擦り下ろしが見事に融合！！】

　テレビから漏れるアルプススタンドの吹奏応援をBGMにしながら、私はバッターボックスに立った気分で、配膳された一杯と対峙いたします。とにかくこの一杯はキレがいい！！盛り付けの妙というより、質感が迫ってくるようです。何故こんなに煌めいて感じるのか・・・それは、スープに理由がありまして、「ジェル状態」になっておるのです。とっても緩やかジェルでして、レンゲからポタポタと落ちる程度に緩く、麺や具材には絡む程度の粘りがあるという感じ。

　薄い琥珀を感じさせる透明感に、大きめの泡が内包されておりよりキレイに感じさえますが、何といってもオリーブ油が適度に浮かび遊んでおり、一見フレンチのソースのようにも思えます。いや、このオリーブオイルがまた味わい深く香味がどことなく凄い凄い！なんじゃこれは！！！味わうと冷え冷え〜。そして、じんわりと優しい塩気と鶏の旨味を感じます。その残存の中に、不思議なオリーブ油の香りと滑らかさが広がり、なんと崇高なことか。酸味は不在か、隠し味程度で気にならない程度。混ぜれば混ぜるほど、トッピングの風合いを写し取り、中でももやしの下味となっている白太胡麻油が、香ばしさにックリッピングポイントを与えて、楽しませてくれます。岩のりの風合いも妙に合う。そして、シャーベット状になった辛い大根おろしも落ち着いた和の風合いを広げてくれて、無国籍の崇高な味わいになります。

　ご店主の説明によると、後半に擦り下ろしレモンを投入してくださいとのこと。投入前に、少し摘んで味わいますが、酸味と甘みがクロスしてこれがまたうまし！雑な発想なら酎ハイに入れてしまいたいかも・・・・きっと合うと思う。これを投入するとまた少し味変化して、さらにさっぱりとするという計算。いや〜、これはうまいっすよ。私は気持ち良く、打ちのめされた気分です。

【ジェルの滑りに全体が包まれつつも、クツクツとした明確な歯ごたえ！そして引き締まったバディに麺のほのかな風合い！！】

　麺に絡むという点では、これ以上ない秀逸ぶり。細麺というところも相まって、なかなか面白い啜り感です。ゴボっと玉になってしまうこともなく、するすると解けるのだけど、適度の集まりが箸にかかる。通常なら喉につかえるところだが、口当たりが超滑らかで、滑り込むように口内にほうり込まれます。

　冷えて引き締まった淡麗な風合いがするストレート細麺。芯を形成することなく、全体でクツクツとした前歯の感覚を与えてくれます。それもゆっくりと横ずれを感じさせながら、順列に端からプチプチとね・・・。時々、縦伸びするような弾力を感じさせながら、そしてグルテンの淡麗な風合いを感じさせながら。奥歯でプレスすると固めにクチクチと潰れこみます。

　喉越しがまたはっきりとしていて、食べ応えを感じさせます。滑る間に明確な麺のシルエットを映し出す感覚。これは、このジェルっぽいスープと、ハキハキした細麺の組み合わせしかなし得ないような滑りですね〜。スープも飽きないが、麺もまた飽きない。最後まで。この時点で、ちょっといつもより評価のボーダーを超えた感じがしました。

【オードブルでも通用しそうなソースかかったチャーシュー！あとはしっかり冷やし中華の馴染み深いラインナップ】

　鶏の胸肉がまた仄かなソルティーと、淡麗なスパイシーという感覚でとても上品で美味。何気にソースのごとく、迫力あるオリーブ系のソースがかかっていて、もはやオードブルのようです。それにしても、このオリーブ油は妙に色っぽい味わいだぞ！！

　トマト・かいわれ・もやしといった、冷やし中華のいつもの三兄弟もここでは、どこか借りてきた猫のようにお上品。しっかりと美味い。さらに揚げ玉が最後までクランキー！スープがジェル状になっているので、絡まってもふやけ切らないのだわ！この食感もまた楽しくて、最後まで隅から隅まで飽きない！揚げ玉がこんなに美味いとは知らなんだ。カニかまもご愛嬌ですね（笑）。私は、冒頭でこいつを縦に４つ程度に割いて小分けにして楽しみました。

　具材にしても、新旧織り交ぜた感じがあって、非の打ち所がなし。こいつは、どえらい冷やし中華。作品です。

　総じまして、「2015猛暑シーンにトップクラスの印象深さ！」なる冷やし中華です。これだけ、テクニック感をありありと感じさせてもらった冷やし中華も珍しいかも。これは、毎夏の名物に昇華を期待ですよ！惜しむらくは・・・8/17でこのメニューは一旦終了。また来年あるかないかという状況ですが、これはご店主に陳情したいほどに、またお会いしたい一杯！一回食っとけとお伝えしたいものの、また来年を待ちましょう。ともあれ大満足！なので詠います！

　　　汗流る
　　　店主迎える
　　　笑顔哉
　　　

　　　渾身の露
　　　泡沫のジェル

　お粗末！と言うことで家族にも感謝しながら合掌！！今日も本当にごちそうさまでした！！！