小雨降る金曜の午後!遂に王の本丸「醤油」と対峙!

金曜の午後半休。この一杯のためだけに、わざわざ休暇を取りました。季節は10月下旬、空は厚い雲に覆われ、窓の外を冷たい小雨が叩いています。こんな日にこそ、心と体を芯から温める極上の一杯が恋しくなります。

移転開店して以来、まずは変化球の「塩」から入り、次にマニアックな「煮干」を味わいました。どちらも素晴らしい完成度でしたが、心のどこかでずっと意識していたのは、この店の原点にして頂点である「醤油」。数々の食通を唸らせ、伝説を築き上げてきた本命と、今日、満を持して対峙します。

<サッポロ赤星> 主役を待つ至福の序曲!ラーメン好きが愛する、歴史と風格の一杯!



主役の登場を前に、まずは喉を潤すための儀式を執り行います。選ぶのはもちろん「サッポロラガービール」、通称「赤星」です 。キンキンに冷えた薄手のグラスに、褐色の瓶から黄金色の液体を注ぎ込みます。きめ細やかな泡が立ち上り、グラスの表面にはうっすらと水滴が浮かびます。これこそが、ラーメン前の最高のプロローグです。



1877年から続く、現存する日本最古のビールブランド 。そのラベルに輝く赤い星は、開拓使のシンボルである北極星がルーツらしい 。現代主流の「生ビール」とは一線を画す、昔ながらの熱処理製法ならではの、しっかりとした厚みとコクのある味わいが特徴です 。 一口飲めば、麦芽の豊かな香りと心地よい苦味が口の中に広がり、それでいて後味は驚くほどスッキリしています 。この一杯が置いてある店は、間違いなく「分かっている」店です。これから始まる期待を、否が応でも高めてくれる、最高の食前酒!。




<全体> さすが名作リニューアル!荘厳なまでの存在感を放つ!計算され尽くした芸術作品!

遂に帰還の麺屋さくら井!これまで天邪鬼にも「塩→煮干」と攻めましたが、今回はこの店の「王道」にして真髄、「特上醤油らぁ麺」と満を持して対峙します。これは単なる再訪ではありません。王の玉座に坐す、その理由を確かめるための巡礼です。

目の前に静かに置かれた丼が放つ、荘厳なまでの存在感。塩の黄金色とは対照的な、深く、それでいてどこまでも柔らかく奥深く透き通った琥珀色のスープです。その水面には、まるで計算され尽くした建築物のように、色とりどりの具材が配置 。ネギ・青菜・メンマの下に広がるチャーシューの饗宴が客人を迎え入れるかの様相。はや一杯の芸術作品!?

そして、この一杯を真に理解するためには「特上」の選択が不可欠です。移転を機に進化した5種ものチャーシューは、単なるトッピングの増量ではありません 。それぞれが独立した一品料理として成立するクオリティを誇り、この一杯が丼の中に完結するコース料理であるかの如しです!。
<出汁> 鶏と豚の重層的な旨味を芳醇な醤油がまとめ上げる変幻自在の琥珀色スープ!

レンゲで琥珀色の液体をすくうと、上質な鶏油がキラキラと輝き、その奥に揺らめくスープの透明度に息を呑みます。一口含むと、まず鼻腔を抜けるのは、複数の醤油が織りなす、驚くほどに芳醇で丸みのある香り。決して塩辛さが突出することなく、醤油本来が持つ華やかさと深いコクだけが、舌の上を優雅に滑っていきます。

このスープの根幹を成すのは、単一の素材では決して辿り着けない、重層的な動物系の出汁です。名古屋コーチンやはかた地鶏といったエリート地鶏の持つ高貴な旨味に、SPF岩中豚の骨と肉がもたらす分厚いコクと甘みが加わり、力強くも清らかな「清湯」スープの土台を築き上げています 。このパワフルな出汁があるからこそ、本醸造濃口醤油やたまり醤油などを緻密な温度管理のもとブレンドしたという、複雑で繊細な醤油ダレの魅力を最大限に受け止め、支えることができるのです 。

しかし、このスープの真骨頂は、その「深化」にあります。食べ進めるにつれて、個性豊かな5種類のチャーシューから溶け出す脂の甘み、炭火の燻香、ハーブの香りが徐々にスープへと混じり合っていきます。最初はキリッとクリアだった醤油の輪郭は、刻一刻と丸みを帯び、より複雑で官能的な味わいへと変化を遂げます。これこそが一杯の丼の中で完成する、味のグラデーション。伝統的な「醤油ラーメン」というジャンルを、現代的な食材探求と調理技術によって新たな地平へと押し上げた、まさに「ネオ・クラシック」と呼ぶべき一杯です。

<麺> 三河屋製麺謹製!絹の如き麺線がスープと完璧に調和する究極のパートナー!

この芸術的なスープを寸分の狂いなく受け止めるのが、言わずと知れた名門「三河屋製麺」謹製の特注麺です 。箸で持ち上げると、絹糸のように美しく整った麺線が、琥珀色のスープをキラキラと輝かせながら姿を現します。

加水を抑えめにした中細ストレート麺は、見た目通りの滑らかな舌触りと、つるりとした喉越しが特徴です。しかし、その魅力はしなやかさだけではありません。噛みしめると「サクッ」「プツッ」と小気味よく切れる、軽快な歯切れの良さ。この食感が、多種多様なチャーシューの食感と見事なコントラストを生み出し、咀嚼する喜びを増幅させます。

そして何より特筆すべきは、この複雑なスープとの完璧な一体感です。自己主張の強い麺ではなく、あくまでスープの伴侶であることに徹しています。繊細ながらも芯のある麺は、スープの芳醇な香りと旨味を過不足なく持ち上げ、口の中で小麦のほのかな甘みと融合します。店主が目指す「毎日でも食べられるラーメン」という哲学は、この麺の選択にも明確に表れているかのよう!。決して飽きさせることのない、究極のバランス。まさに、この一杯のために生まれた、最高のパートナーと言えるでしょう!。


<チャーシュー> 調理法の粋を集結!それぞれが主役級の味わいを誇る圧巻の「肉の五重奏」!





この一杯の主役は、間違いなく豪華絢爛に進化したチャーシュー群です。移転に伴い新たに導入された炭火コンロとオーブンが、これまでのチャーシューの概念を根底から覆し、5種類もの肉が織りなす味覚のシンフォニーを生み出しました 。もはやこれはトッピングではありません。一杯の丼の中で完結する「肉のフルコース」です。

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肉の種類
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部位
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調理法
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特徴
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豚肉
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ばら
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炭火焼き
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スモーキーな香り、とろける脂の甘みと香ばしさ。提供直前に炙る。
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豚肉
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肩ロース
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低温調理
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美しいピンク色。もろみ麹と香草でしっとりと柔らかく、上品な香り。
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豚肉
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内もも
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吊るし焼き
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赤身のしっかりした歯ごたえと凝縮された旨味。燻製のような香り。
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鶏肉
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もも
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オーブン焼き
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パリパリに焼かれた皮、ジューシーな肉質。ブラックペッパーがアクセント。
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鶏肉
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むね
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低温調理
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もろみ麹使用。驚異的なしっとり感と柔らかさ。パサつき皆無。
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提供直前に炭火で炙られた豚ばら肉は、そのスモーキーな香りが醤油スープに溶け出し、深みを一層増幅させます。低温調理された豚肩ロースは、もろみ麹の上品な甘みが肉の旨味を引き立て、舌の上でとろけるようです。


吊るし焼きにされた豚内もも肉は、噛みしめるほどに赤身の力強い味わいが溢れ出します。オーブンで皮目をパリッと焼き上げた鶏もも肉の香ばしさと黒胡椒の刺激は、この一杯の鮮烈なアクセントです。そして、もろみ麹の力で驚異的な柔らかさを手に入れた鶏むね肉のしっとり感は、まさに官能的の一言です。それぞれが異なるベクトルで、この醤油らぁ麺の世界観を拡張しています。



<味玉> 濃厚な黄身がとろけ出し全体としてに揺るぎない感動を与える完全無欠の存在!

数々の豪華な具材が並ぶ中で、この味玉は王道にして究極の存在感を放ちます。醤油ダレが染み込み、美しい褐色に輝く完璧なフォルムの白身です。箸で割れば、中から現れるのは、まるで夕焼けを閉じ込めたかのような、濃厚で鮮やかなオレンジ色の黄身です。


流れ出す寸前で絶妙に留められた、とろりとした半熟加減はまさに芸術の域です。口に運べば、ぷるんとした弾力の白身と、ねっとりと舌に絡みつく濃厚な黄身のコクが一体となり、至福の味わいが広がります。出汁の旨味が芯まで染み渡りながらも、卵本来の優しい甘みは失われていません。そして、この溶け出した黄身が琥珀色のスープと混じり合う瞬間、スープは一瞬だけクリーミーな表情を見せ、まろやかさの極致へと誘うのです。一杯の丼における、揺るぎない安心感と感動を与えてくれる、名バイプレイヤーです。

<ネギ・青菜・メンマ> 静かに力強く支える計算され尽くした盤石の名脇役達!


丼の中央にこんもりと盛られた、極めて繊細に刻まれた白髪ネギ。そのシャキシャキとした食感と爽やかな辛味が、芳醇なスープの味わいをリフレッシュさせ、次の一口へと誘います。鮮やかな緑が美しい青菜(おそらく小松菜)は、そのほのかな苦味が絶妙な箸休めとなり、味覚のバランスを完璧に整えます 。


脇役と呼ぶにはあまりに上質な細メンマは、サクッとした食感の後に、出汁の旨味がじゅわっと溢れ出します 。これら王道にして盤石の布陣が、スープと麺、そしてチャーシューという主役たちを、静かに、しかし力強く支えているのです。


総じまして・・・「もはやラーメンというジャンルを超越した一杯で完結するコース料理!?醤油ラーメンの新たな地平を切り拓く!」

いやはや・・・さすが醤油の名店です。店主・櫻井氏の哲学と探究心の結晶であり、醤油ラーメンというジャンルが到達しうる新たなる地平と言えば大袈裟か?。主役である5種のチャーシューが織りなす、香りと食感のシンフォニー。そして、それら全てを受け止め、食べ進めるごとに旨味を増していく、変幻自在のコンプレックススープです。白髪ネギの食感に至るまで、丼を構成する全てのパーツに一切の妥協はなく、緻密な計算の上に成り立つ。店主が語る「気づかないくらいに毎日ちょっとずつ変わっていく」という言葉通り、この一杯は今日の完成形であり、明日はさらなる高みへと進化しているのでしょう 。激しくオススメします!旨し!なので・・・とっとと最後に詠って、いつものように締めたいと思います!

お粗末!ということで家族にも感謝しながら合掌!!今日も本当にごちそうさまでした!!!


