駅ナカという名の聖域にて、行列知らずで辿り着く至高の一杯!今回も「塩」の深淵へと挑む


今回も通勤経路という日常の動線上に、突如として現れた非日常への入り口「中華そば よしかわ 西荻窪店」へとやって参りました。駅の改札内という、喧騒と慌ただしさの象徴であるべき場所に、静謐な美食の空間が広がっている。まだその存在が広く知られていないという僥倖か、あの「よしかわ」の味を、行列という煩わしい儀式を経ずして享受できる。この特権を味わわずして何とするか!。

先日のつけそばの感動が忘れられない「塩」の存在。迷いなく「塩」のボタンへ指を伸ばします。これは単なる昼食ではありません。塩清湯と言う名のパラドックスを解き明かすための美食の探求でございます。


<全体> 着丼の瞬間に視覚から味わう、黄金色の光そのもの。鶏油の星屑が流転し、三種の肉が鎮座する、計算され尽くした丼という名の小宇宙


カウンターに丼が静かに置かれたその瞬間、レンゲを取るより先に、私は息を呑み、まずその“光”に目がゆく。それはまさしく液体となった淡いような黄金な風合い。照明の光をただ反射するのではなく、一度スープの内部に深く取り込み、内側から発光しているかのような、神々しいまでの輝きを放つ清湯(ちんたん)。その水面を凝視すれば、細かく、そして大きさの揃った鶏油の玉が、まるで天の川の星屑のように無数に、そしてゆっくりと流転している様です。

ストライプが施された器の縁は、この黄金の液体を主役とする一枚の絵画を完璧にフレーミングし、その色彩をより一層鮮烈に引き立てる感覚。中央には、淡い桜色の豚肩ロース、しっとりとした乳白色の鶏胸肉、そしてきめ細かな赤身が美しい豚ロースが優雅に重なり、その麓には太く、繊維質ながらも柔らかそうな淡いベージュのメンマが横たわるのが素敵です。全てが完璧な配置と色彩のバランスで整列した、一つの完成された作品!。これは“飲ませる清湯”。その圧倒的な端正さと、有無を言わさぬ吸引力が、食べる前から五感にそう確信いたしましたー!。

<出汁> 透明感と裏腹に乾物が低周波ブースト!深淵なコク!優しさと力強さ!キレと丸み!奇跡の液体


レンゲをそっと沈め、黄金の液体をすくい上げる。そのレンゲの中でさえ、向こう側が透けて見えるほどの透明度。しかし、その見た目の軽やかさとは裏腹に、一口含んだ瞬間に訪れるのは、味覚の常識を揺さぶる衝撃的なパラドックスの波だ。舌先に触れるのは「優しく、でも意志は強い」塩の輪郭。決して刺々しくない、どこまでも丸みを帯びた塩味が、しかしこの一杯の骨格を寸分の狂いもなく描き出しています。


その塩の舞台の上で、まず主役として踊り出すのは、ふくよかで厚みのある鶏の甘みとコク。だが、このスープの真髄は、そのすぐ後ろで鳴り響く“低周-波ブースト”ってなイメージ。昆布の深遠な旨み、節系の複雑な香ばしさが、味の表面に現れるのではなく、まるで高級オーディオのサブウーファーのように、味覚の土台を力強く、そして静かに持ち上げている様です(学生の頃はオーディオファン)。

さて塩気。キレは日本刀のように凛々しいようで角はどこまでも丸い。どこまでも澄み切っているのに、その奥行きは計り知れないほどに深い。この矛盾の連続こそが、飲み手を飽きさせず、次の一口、また次の一口へと抗いがたく誘う魔力となっております。表面の鶏油が薄い膜となって光のコーティングが生まれる。その完成度に、思わず真顔で深くうなずいてしまった・・・。



<麺> 絹の如き滑らかさと、噛みしめれば応える確かな芯。黄金スープという光のコーティングを纏い、小麦の甘みを放つ凛々しくも端正な多加水細麺

黄金のスープの海から、箸でそっと引き上げる。現れたのは、多加水麺ならではの濡れたような艶を放つ、凛としたストレート細麺。一本一本が光を反射し、その麺線は寸分の乱れもなく美しく整っている。まず唇を滑るその感触は、まるで上質な絹のようになめらか。

スープ表面の鶏油がもたらす光のコーティングが、官能的なまでの口当たりを演出。しかし、その優雅な第一印象に油断してはいけない。歯を立てれば、“くっ”という小気味良い抵抗感と共に、しなやかでありながらも確かな芯の存在を主張してくるイメージです。

この心地よい反発力が、咀嚼する喜びを何倍にも増幅させる。角がわずかに膨らんだ麺の断面は、スープを過剰に持ち上げすぎることなく、それでいて必要な旨みと香りを的確に口中へと運び込む、計算され尽くした設計!?。咀嚼を進めるうちに、小麦本来の持つ、ほのかな甘みがふわりと立ち上り、鼻へと抜けていく。この麺は、つけそばで見せるモチっとした表情とは全く違う、“凛々しい端正”というべき側面をこの温かいスープの中で見せてくれるようす!。

<チャーシュー> 清楚な鶏胸!脂の甘みと塩のキレが対峙する豚のロースと肩ロース!個性が際立つ三種肉!丼の中で繰り広げる至福の饗宴


この透明なスープは、素材の真価を一切のごまかしなく映し出す「真実の鏡」だ。その鏡の前で、三種の肉はそれぞれが見事な輝きを放っている。

鶏胸コンフィ: まさに「清楚」を体現した一品。低温でじっくりと火入れされ、パサつきとは無縁の、しっとりとした質感を保っている。その真価は、スープに浸した時にこそ発揮される。繊維の一本一本にスープが染み渡り、鶏、乾物、塩、油というスープの複雑な設計図を、この一切れが完璧に写し取って舌の上で再現してくれるのだ。麺に巻いて食せば、脂ではなく“上品な湿度”でコクを加え、全体の調和を崩すことなく満足感をもう一段階上へと引き上げる、知的な名脇役。

豚ロース: 味覚のピントを合わせる、端正な赤身の先導者。三種の肉の中で、まず最初に味わうべきはこの一枚。きめ細かな赤身が主役であり、低温で芯までやわらかく仕上げられている。噛み始めはサラリと上品、しかし後半にかけて肉本来の旨みを含んだ肉汁がじわりと広がる。周囲を薄く縁取る脂は軽やかで、黄金のスープに数秒くぐらせると、スープの熱と鶏油でふわりと溶け、上質な甘みへと昇華する。この一枚が、まず味覚のピントを合わせ、この一杯全体の設計の美しさを鮮やかに見せてくれます。

豚肩ロース: 薄桃色の断面に走るサシが美しい、こちらは「上品なカオス」の担当。箸で持ち上げると、その柔らかさで自重に耐えきれず、とろりと形を変える。口に含めば、赤身の旨みと、筋膜由来のゼラチン質が舌の上でとろけ出す。特筆すべきは、その上質な脂の甘みが、スープのクリアでシャープな塩味と直接的に対峙する点だ。甘みと塩味、豊満さと切れ味。その鮮烈なコントラストが、口の中で幸福なスパークを生む。賑やかな味わいでありながら、塩の輪郭によって完璧に統制が取れているイメージ。




<メンマ> 小気味よい食感とスープを含んで溢れる旨みで丼全体の完成度を影から支える名脇役!

主役級の具材が並ぶ中で、このメンマは決して自らを過度に主張しません。しかし、その存在感は確かだ。太く、丁寧に処理されたその姿は、見るからに上質。歯を入れれば、“コリッ”という硬すぎず柔らかすぎない、絶妙な食感が鼓膜を心地よく震わせる。その瞬間、メンマの繊維の間にたっぷりと蓄えられていた黄金のスープが、じゅわっと口の中に溢れ出すのだ。味付けは極めて控えめで、清湯の繊細な輪郭を一切乱すことがない。まさに見事な塩梅!。

<食べ方ミニ指南> 序盤・中盤・終盤で変化する味の風景を楽しむために。この一杯のポテンシャルを最大限に引き出し、味わい尽くすための至福への道標
この一杯は、さながら三幕構成の舞台演劇だ。その魅力を余すところなく堪能するために、ここにささやかなる道標を記してみたいー。
・第一幕(序盤): まずはレンゲでスープそのものを数口味わい、その透明な見た目と深淵な味わいという、壮大なパラドックスの設計図をじっくりと読み解く。次に、麺を少量だけ、短いストロークで啜り、口内の温度と感覚を、この繊細なスープの世界に同調!。
・第二幕(中盤): ここで物語は大きく動く。“麺→豚肩ロース→レンゲのスープ”という三位一体のコンボを試してほしい。小麦の風味、豊満な豚の脂の甘み、そしてそれら全てを鮮やかに洗い流し、輪郭を再定義するスープのキレ。それぞれが互いを打ち消すのではなく、互いを際立たせる“動的対比”が、口の中で完成する瞬間!。
・第三幕(終盤): フィナーレは、鶏胸肉を麺にふわりと巻きつけ、一体化させて味わう。清楚で上品な湿度が、クライマックスを迎えた味覚を優しく着地させる。もし余力があるならば、肉を一片とスープを一口だけ残し、その最後の余韻と共に静かに幕を閉じることで、この美食体験の満足感は、美しく、そして完璧に収束!。
総じまして「シンプルとカオスの両立?旨みの関係性と設計で魅せる一杯!まさに光と塩が織りなす究極の拉麺美学!?」

キレと丸み、設計と情緒、明るさと深さ。相反する要素の全てが、最後の一滴まで決して破綻することなく、完璧な調和を保ち続ける。塩は輪郭を描き、鶏油は余韻をつなぎ、乾物は重心を支える。この盤石の三層構造の上で、端正な細麺がメロディを奏で、三種の肉が豊かな和声を重ねる。派手な演出は何一つない。にもかかわらず、食後に訪れるこの“静かなる高揚感”は、個々の要素の足し算ではなく、それらの「関係性の設計」がいかに巧みであるかを雄弁に物語っていると感じ入りました。これも激しくオススメ!旨し!なので・・・とっとと最後に詠って、いつものように締めたいと思います!

お粗末!と言うことで家族にも感謝しながら合掌!!今日も本当にごちそうさまでした!!!










