地元でもハードルが高い店は、ハードルが高いわけで・・・リピート率が低い。私にとって西荻窪の「はつね」はそういう所です。シャッター覚悟で週末突撃しても、行列の長さに撃沈。なので代休を強制的に取得させられた日に、これはもう行くしか無いのです。丁度・・・今は気分的にも「塩気分!」ですしね。開店時間11時5分前・・・・それでも先客がおりまして、ギリギリ末席に着席。
でも、今回の先客はみな同じ年格好なのだけど、写真とっているのは私だけで、みな「これ好き!」っていう方たちが多い。こういうのを本当のラーメンラバーというのでありましょう。そんな愛すべき方達に支えられているのを、麺を待つ間にも実感します。店主さんの手際は、相変わらず急がず慌てずなのに、動作に無駄がないように時間を感じさせません。12分少々で配膳完了。6〜7名の注文を一気に処理するなか、すばらしきオペレーション!
【スープ:野菜汁の煌めきというか・・・・甘みと塩気の揺らめきがナイス!】
<スープの煌めきと透明度が群を抜きます・・・野菜の甘みがふんだんに溢れる>
相当のインターバル置いた既食だとは言え・・・・、この煌めき度合いは本当に半端ないのであります。多少濁っていても長閑ささ感じてしまうこの「タンメン」という一杯に、これほどまでに「キレイ」さが必要なのでしょうか・・・と思わず自問してしまう。狭くて年季が入っている暗がりの店内に、ピンスポットのような日がさすではありませんか。配膳の瞬間、やはり来て良かったと思う。細かい脂の輪が、さささーーーっと広がり、まるでそれらはスタートレックのワープ航法時に見られる恒星達のよう。この透明度と煌めきは、最後の最後まで持続するから凄いことだ。麺の風合いなどあって多少濁るのが常であるのですがね・・・。
ともかく、野菜の汁が実に豊かで優しい。キャベツがこれほどまでに甘かったのかと改めて思います。自然な甘さとはこういうことなりと思えます。それほど塩加減が抑え気味でありまして、素材の旨さがイキイキします。キャベツの他に、もやしですら、その水っぽさの中にちゃんとした甘みを放出しております。野菜を鍋で適度に炒めてから、鍋の中にスープを投入するご店主の動作をぼーっと見つめる。単純そうで勘所を押さえた無駄の無い動きで、思いのほかあっという間に配膳されます。実に熱々のスープであり、温度感覚も実にいい。食べ進めて時間がたつうちにも、野菜は引き続き旨味を放出しているようにも感じられて、食べ終わるころには、そのスープの中に野菜エキスの凝縮感すら感じます。
<塩気の引っかかりがまるでなし!鶏ガラの存在も意識せず、すごく軽やか>
とにかく野菜の旨味だけあったら、塩は必要最小限で良いのでしょうね。塩味を意識させない味の構成であります。よく使う表現ですが、塩気にひっかかりを一切感じず、するする〜っと染み入るように舌と胃袋にゆきわたるようなスープ感覚です。塩だけでなく、動物感も必要最低限かと思えるほどのライト感覚。腹一杯でも別腹のように食うことが出来るようです。
でも鶏ガラのコクもベースにあるのでしょうね・・・。動物感が一切前に出てこずとも、さっぱりと頂くことに集中したこのタンメンというカテゴリーの奥深さを改めて知った思いです。
【麺:意外にしっかりとした柔麺だったことを再発見】
<しっかりした柔麺、前半はやや弾力ある歯応え、後半は緩やか>
実は、かなり足が遠のいておりましたので、麺に関する記憶が薄れておりました。改めて食うと実に柔麺が気持ちよいですな。全体的にこれまた白色がかってタンメン全体的にも美しさに映えます。太さは標準タイプでやや捩れているような風貌。ご店主が麺釜に投入する際は、若干手もみするような仕草を与えます。大きめの麺釜にゆったり泳がせて、平ザルで一気に湯切りするスタイル。タイマーなんぞなくとも、指先で千切った感覚で茹で加減を確かめられます。
前半の食感は、柔麺と言えどもクッチリとしたやや反発ある歯応えを感じまして、加水がやや高いとは言え、モチモチにはなりすぎず、しっかりとした反発を感じさせます。前歯で切る感覚もプッツリとした断裂の印象。奥歯で束になったところをクチクチとすり潰すと、程よい潰し込みを感じそこから風合いを感じ取ることもあります。
後半は、やや汁を吸い込んで・・・よくあるクチュリとした柔らかい弾力に変わります。この方が一般的なタンメンのイメージに近いのでありまして(個人的な話)、スベリ度合いもましてスルスル〜っとのど越しよく頂けるのであります。
<野菜たちと絡む時に麺の風合いが感じられる>
さて麺の風合いですが、麺単独で食うよりも、キャベツとかモヤシと絡めて食った方がより風合いがハッキリしていいです。染み込んだスープ味だけでなく、粉の風合いを少しばかり味わったような気分にさせます。和蕎麦と違ってラーメンは具との一体感も味わってこそ、麺の個性が浮き彫りになるのでしょうか。スープとのからみもよく、麺の地肌に貼り付いた油の輪っかも一つ一つの旨味が貼り付くような錯覚を覚え、一層旨く感じます。
【具:特別なものを使っていないのに特別な素材感】
次から次に客が並んで・・・途切れない行列。8割方がタンメンを注文するので、冷蔵庫から野菜ストックを取り出すのも頻繁です。座った位置から冷蔵庫のスキマが覗き見れますが、はたして特別な野菜を使っているようには思えないのです。しかしながら、仕上がりはキラキラと甘さもゆらめくあっさり塩味な野菜。炒めてから少し煮るだけなのですが、調理後の仕上がり具合にどこか特別なものを感じてしまう。特別でない具材がイキイキします。キャベツ、もやし・・・・・。茎の部分がどれも小さくスライスされていて、それを歯がキャッチしてシャクリと気落ちよい歯応えを感じる。うーーーん、飽きないね〜タンメンの野菜って!
総じまして、「何か特別な日には再訪問!」と思える一杯ですな・・・・。私にとって今回は特別な一杯です。
気が緩み過ぎたのかどうか、最近仕事が変わって惚けている自分がいることも確か。このいい年をしてちょっと焦ったりしている自分は、つい最近まで真逆の環境にあってしんどかったはず。関西から東京に来ての数年感で、一番空を青く感じた一日だったかも・・・。印象深い一日には、いい一杯を食したい。そんな期待にぴったりあって何より。なので詠います!
穏やかな
秋の晴天
陽が射して
気も緩むなり
のどかな麺顔
お粗末!ということで家族にも感謝しながら合掌!今日も本当にごちそうさまでした!!
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